浩の教室・第26回勉強会の模様

 さて、勉強会の報告です。土曜日は、男性6名、女性8名の計14名の方の参加をいただきました。講義、答申輪読、討論ともに、多様なご意見を活発にいただき、非常に刺激的な時間となりました。

 まず、「議論のたたき台としての講義」では、生活科と総合学習の意義を再検討することからはじまりました。そこでは、参加者が講師としてどのような取り組みをされているのか報告があり、生活科や総合学習の実態が浮き彫りにされました。残念ながら、ワタクシも含め、社会人の参加者や学生の参加者は、生活科や総合の実態をあまりよく把握しておりません。そこに「現場の声」をいただいて、想像を豊かにしつつ生活科や総合の実態をおぼろげながら輪郭を描けたことが利点ではなかったかと思われます。面白かったのは、神戸市と大阪府、奈良県の取り組み方が全然違うということでした。その違いを確認できたことが、そしてそこからイロイロ考えられたことが、講師の参加者にとってのメリットではなかったでしょうか。地域によって生活や総合に対する力点のおき方も違っており、非常に興味深い議論の出し合いになりました。

 小学生のママさん参加者の立場からの報告もあり、つまり、義務教育受益者からの見方もでてきて問題点、利点の検討が広がりました。さすがにそれはパーソナルな発言ですので、ここではいえません。

 しかし、みなさんからの報告を総合していえるのは、生活や総合の存在意義が薄れているということです。もちろん「春みつけ」や「秋みつけ」は行事的に行なわれますし、「学校探検」も実施されているようです。しかし、それらは単発的にあるだけで、長期的な計画にたった学びが成立していないようです。そして、生活や総合が、他の行事の準備時間に充てられるようにもなっている。すなわち、「道徳の時間」が本来の使い方をされずに実力テストに代替されたり、席替えの時間になったりするのと同じように、生活科の教科としての意義が見失われているのです。

 これでは、「確かな学力」を身に付けるべく教科指導の力量で採用された教員は、力を発揮していないといわなければならないのではないでしょうか。小学校全科で採用されたかぎり、生活科もワタクシたちは充実させていかなければなりません。

 このほか、講義から発展的に議論されたのは、とりわけ生活科の意味を考えることでした。上の議論と違うのは、就学前教育と小学校低学年教育とのつながりにどのような問題点があるのかでした。そこで、就学前教育の2系統の違いが報告され、幼稚園卒園者と保育所出身者では、小学校にはいってからのなじみ方がかなり違うことがわかりました。この接続の仕方が児童の成長を左右することになるようです。現在の自由保育は、小学校の学習環境に無理なく接続するのに「無理」があるようです。

 このことはもう5年くらい前からの懸案でした。子どもがすみやかに小学校における学習にはいっていけるかどうかは大問題です。ちゃんと座って授業を受けられるかどうか、そうしたことは学習の大前提で、「お行儀よく先生のお話を聞けるようにする」べく就学前教育が機能していなければ、目もあてられません。

 だからこその生活科設置だったのですけれど、それが崩壊している。「春みつけ」で郊外に土筆の芽を探索しにいっている低学年児童は、地域の方から「遊んでるやないか」と批判される…。これでは地域との連携がうまくいくはずがない。学校の実施することを地域がずべて知ることはできません。しかし、地域がそれを知ろうとする意欲がなければ、これまたいくらよい試みを実践しようとしてもうまくいきません。

 「議論のたたき台としての講義」の終了後、少し休憩をとり、答申輪読に進めました。「当面の教育課程答申」のつづきを読みました。

 そこでは、やはり、「確かな学力」とはなにか、答申の定義を基本ラインにおきつつも、いわば「私の考える『確かな学力』とはなにか」を参加者個々人が形成する立場にたって発言が飛びかいました。答申では、子どもに求められるべき学力の考え方について、コンセンサスがないことを問題としています。そこで、教育行政、地方教育行政、学校、家庭そのほか教育関係の学者の方々の「学力」とはなにかという認識をもちよって統一しようとしています。

 学力とは単に知識の量ととらえるのか、思考力や判断力なのか、学ぶ意欲も学力といえるのか、そうした個々まちまちな学力論が現在の学校を苦しめているといえるようです。

 なかでも「学習意欲の向上」は、この答申が発表された時点での最大の教育課題であって、児童生徒の生活そのものと密接した学力をどうしたら身に付けられるかという議論と絡まりあい、平成10年に出発した総合学習を学びへの動機付けの時間としてとらえようとしています。そして、この考え方が生涯学習につながっています。学校が生涯学習の基礎的部分になりうるのかどうかも、ひょっとすれば再々検討するべきかもしれません。

 本当に人間は「学びが好き」なのでしょうか。一生勉強していこうとする精神は崇高なものであり、理想として申し分ないものです。しかしさまざまな考え方をもち個として行動する人間、すべての義務教育受益者が、生涯学習的価値にひれ伏すとは「現実」をみない議論なのかもしれません。いいか悪いかといえば「学ぼうとしない」のは悪いに決まっています。ただ「勉強が好き」と本気でいえる児童生徒が学校にどれくらい存在しているのでしょうか。ひとのいわゆる「目標」や「成功」が何処に設定されるかで、「学び」に対する価値観も相当変わるはずでしょう。それをすべて一元化する企てを国家は遂行できるのか、これはわかりません。

 ところで2年前のこの答申が、世に与えたインパクトは大変強かったですね。従来の学習指導要領の見直し期間を半分に縮めたからです。では、90年代以降のごたごたを整序する決定打的答申となったかどうか。それはそうではなかった。まさに「当面」にかぎっての彌縫策的答申であったので、いまもまだその火種がくすぶりつづけているのです。してみると、「当面」と冠したのは中教審の「大きな作戦」だったと理解せざるをえませんね。もう少し先に抜本的なものを出そうという…。

 終盤は、集団討論を実施いたしました。テーマは、「最近、児童生徒における集団活動がうまくできていないと思います。どのように指導していきますか」というものでした。参加者は6名(仮にA〜Fとします)、25分間です。

 まず、Bさんから集団活動といってもイロイロある、「授業の場面での集団活動」に的を絞って語りましょう、と提案がありました。授業中、なんらかの学習活動にあたって、教員の指示が貫徹しないと、勝手気ままな動きになる。だから、指示は端的に適確にしかも短い言葉でいうのが大切ではないか、との発言がありました。Dさんがこれを受け、授業のプロセスにおいて、児童生徒が「聞くべきとき」なのか、「自分で活動するとき」なのか、はっきり自覚を促すことのできるようにするのが教員の役割であると発言がありました。つまり、授業にけじめ、メリハリをつけよう、ということですね。

 Eさんからは、始業のベルが鳴っても着席していないなど、生活態度そのものを反省することが必要とご意見がありました。授業に遅れてくることが集団に対しどのような問題があるのか、すなわち遅刻が迷惑であることをはっきり認識させることから、「授業の場面での集団活動」も可能となるということを強調されました。Fさんからは、Dさん、Eさんの意見を受け、個性を尊重する教育が喧しすぎて、集団活動ができないのであろう、個性尊重と好き勝手とのはきちがいが現場に浸透しているので、その解決が前提となるのではないか、と根本的な問題に目を向けられました。

 こうしたご意見がつづく中、具体的な発言がでてきて、討論の流れが現場感覚を中心とするものに変わってきました。どのような集団活動なのか、Aさんからは長なわとび、2人3脚、Eさんからはミュージカルの実践、Bさんの「いわれてうれしい言葉集め」というように、活動の実態にもとづいての報告的発言がありました。そして、少し観点がかわって、児童生徒の居場所と集団活動の関係についての問題提起がありました。

 体育が得意な児童生徒が体育委員を担当し、集団活動の自主性を高めていくのはどうか、こうしたご意見がDさんからでたのです。クラスをまとめる行事を計画し、「がんばっていこうや」と声掛けする。その地道な積み重ねが年間を通しての成長となっていく。いわば点としての行事を重ね、児童生徒の集団活動に対する自律した意識が形成されていくことになる。規則や規律遵守の態度形成というと、「先生の命令に服従」というように聞こえますので、もっと発展的な、規則を自主的に作っていき、それをみづからが尊重していく態度とでもいうものが形成されるとすばらしいことでしょう。

 Cさんが、いわれたのも上のようなニュアンスからであると思われます。「みんながバラバラだと教室はどうなるのか」という疑問を児童生徒にぶつけてみて、その反応から考えさせてみるということは大切でしょう。そのときに、もう少し実践的に、学校生活のある場面を思い描きながら発言が脚色されれば、もっと説得力のあるいい方になったのではないでしょうか。

 このほか、みなさんの中から、クラスが仲良しグループに分割してしまったらどうするか、それが集団活動にどのように影響するかなどの論点がありました。

 25分という限られた時間の中でこれだけの論点がでてきたのは大きな収穫であったと思います。第27回は「個人解剖の試み」です。がんばりましょう。

(2005年3月5日)

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