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浩の教室・第100回勉強会の模様

 昨日、当サイト主宰勉強会にご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。また、今回は第100回ということで、下の写真のようにお花をいただきまして、感無量です。ほんとうにありがとう!ワタクシはいい学生たちに囲まれて、幸せです。

 昨日のメニューもいつも通りでした。まず、「議論の叩き台となる教育学講義」です。そこでは、教育基本法改正確定、防衛省昇格確定、国民投票法案3年凍結といったこの国の大きな舵きりに対するワタクシたちの認識を出し合い、議論の端緒といたしました。こうした右傾化を国是不在に根拠を見出すわけなのですが、エスタブリッシュメントの暴走をどういうように喰い止められるのか、それとも、このまま数の横暴を許可し、「いくところまでいく」のか、そこのところを考えてみました。個別の議論では、教育基本法の改正において、生涯学習の位置付けについて話し合いがありました。レジュメをベースとした議論では、これは面白かったのですけれど、情報化社会とはいつはじまったのか、何に代わってこのようにいわれ出したのかといった現代史的関心、また、国際化社会とはいわれるものの、ワタクシたちが国際化感覚を肌で知れる場面というのはどういう場面であるのか、こうしたことが話題になりました。バブル崩壊後の時代をキャッチフレースから考察したということになります。

 次に、大阪府の過去問の解答解説です。今回は、食に関する指導答申についての問題でした。現在、ノロウイルスに苦しまれている方々がいらっしゃる中、食の自己管理能力について議論しました。これと併せて、給食、給食費の問題、そこから修学旅行の話に飛び火しましたね。実際的レベルで講師の方々からお話をいただき、大学生の参加者の方もイメージしやすかったでしょう。

 最後に討論でした。集団討論のテーマは、「豊かな人間性を育むための担任としての方策を5つ挙げよ。また、その5つに優先順位をつけよ」でした。これがなかなか難しいというか、まとめるのが大変というか、どういう意味合いで順位をつければいいか悩みがあるというか、討論参加者のみなさんは悪戦苦闘されていたようです。そしてそれをみていた傍聴者も、その苦しみをよく理解していたようでした。

 討論時間は25分、参加者は6名です。A〜Fさんといたします。

 最近、討論では「頭をとる」ことに挑戦しており、勉強会そのものでも刺激的な発言をしてくださるFさん。今回も、先陣を切りました。まずテーマを確認するべくテーマを読み上げ、「担任としての方策」という語句に注意を喚起しつつ、ご自身では読書が豊かな人間性を育むひとつの方策になるとされました。すなわちFさんは、他人の気持ちを理解する心情形成の上で、読書から得られるものは大きいし、自分の気持ちを伝える表現力の養成にもなると、読書の有効性を訴えられます。朝の10分間読書運動の推進、教員からオススメ本を児童生徒に紹介するなど、質の高い「豊かな人間性」形成に、読書指導は有効に作用するとのご意見でした。

 Aさんは、小学校志望の立場から、「みんな遊び」を提唱されました。15分休みを活用して、協力する心、協調性を育むために、この「みんな遊び」は欠かせないとの主張です。Bさんは、異年齢交流が、人間としての幅を広げることを指摘し、同時にグループワークを尊重した学級運営が、「豊かな人間性」を育成するとお考えです。この先には、地域の大人との交流を見据えておられました。

 Eさんは、児童生徒が人間性を育むというときに、「なぜ」という疑問、問題意識を持って学校生活を送ることが何より大切であると主張されました。常に「なぜ」を意識する習慣形成が、見聞きするあらゆることどもに対する感性を育て、それが「豊かな人間性」形成を応援するとの考え方です。Dさんは、学習指導要領の文言である「自らを律しつつ、他人とともに協調し他人を思いやる心」が「生きる力」の内容をなすとしつつ、いじめを許さない意識形成が「豊かな人間性」の形成に必ず寄与すると実践的なご意見です。反「いじめ」の態度は、班作りにも、ルール作りにも貫徹させるべきでしょう。それはDさんのいわゆる「思いやる学級作り」の標語に集約されます。Cさんは、これと関連しながら、「聞く態度」と育てたいと述べられます。「相手の話を聞ける人間」、これが目指すべき児童生徒像であるとはっきり伝わってきました。

 Fさんは、「人をできるだけ好きになれる人」とおっしゃいまして、では具体的にそうした「人間好き」の「人間」を学校においてどのような方法で育成するかという議論を提供し、それに答えて日記をつけることを推奨されます。日記を媒介に、一人ひとりの児童生徒の長所を見出したいという抱負も語ってくださいました。Eさんが、このFさんのご意見を受け、日記を書くことによってその児童生徒は意欲的になるとし、かつ、できるなら日記をクラスで発表することでクラスの他の児童生徒が該当児童生徒の長所を知ることができるとされました。そして、これとは別に、体育も「豊かな人間性」を育成する上で重要なのではないかと問題提起されました。Eさんのよいところは、前者のご意見を受け継ぎ、その上でご自身のご意見をいおうとする態度です。他の討論参加者も概ねこうした発言態度をとられていましたが、これは「集団討論における協調性」、「他人の意見をしっかり聞いている」ということを面接官に印象付ける点で有効です。

 Aさんは、このEさんの体育面における人間形成について具体的に議論を継承されます。それは、協調性を養うことができるスポーツの採用ということになります。ドッジボールやバスケットなど、いわゆるチームワークが必須のスポーツをすることにより、「豊かな人間性」が育まれると述べられ、さらに、そこではいい意味での競争心も芽生え、また勝ち負けがついた後の他人の気持ちも理解することができるとご意見されました。そして、体育的人間形成とは別に、自己紹介と他己紹介をすることも、一つの手段ではないかと指摘されました。Aさんのご意見を受けて、もうひとりDさんは、体育とはいえないとしても、行事(スポーツ大会)の練習をするときにも、児童生徒一人ひとりの協調性が試されるとし、行事後の学級レクリエーションの重要性についても語られました。Bさんは、この行事に関連し、教員が余り関与しすぎないことが児童生徒の自主性を育成することにもなり、自主性尊重が学級によい影響をもたらし、「豊かな人間性」形成を助けるとの論旨を展開されます。

 Cさんは、討論参加者が出された多様なご意見から、「豊かな人間性」形成はひとつの方策だけではないことを確認され、それぞれの方策を積み上げ経験値を稼いでいくことが学校現場に求められていると述べられます。その中に、ボランティア活動も含まれると話題提供されました。また、Aさんは、忍耐力を取り上げられました。すわってちゃんと授業を受ける力を指しているわけです。こうした忍耐力も「豊かな人間性」のひとつの要素でしょう。そしてこの忍耐力を育ませるに必要な教材研究について触れられました。Eさんはこの忍耐力ということについて、ゲームを素材に「勝ち負け」について述べられました。

 ここでDさんが、道徳教育に関する話題を提供されました。「豊かな人間性」形成に道徳教育は欠かせませんが、伝えたいこと、教えたいことをストレートにいうのではなく、伝えるべき道徳的価値を児童生徒に理解しやすいようわかりやすくする工夫をすべきであるとご意見されました。具体的には、たとえば松井選手のことを話されまして、「松井は他の選手の悪口を絶対いわない」などとのメッセージを伝えるとのことです。世界中で誇りに思えるような人の紹介ということで切り出されたのですが、これは人物主義的道徳教育批判の立場からは、もう少し考えてもよさそうです。

 さてここで、テーマの課題である優先順位についての発言がありました。Cさんが、どういった部分の豊かさで順位を決めるのか、実践のしやすさで順位を決めるのかと訴えかけられました。これに応じEさんが対応しきれない発言をされましたが、責めることはできないでしょう。この優先順位をつける作業は難しいもので、討論の後でAさんがいわれたように、果たして優先順位をつけるべき問題なのだろうか、ということもあります。テーマが優先順位を求めているので、このジレンマに受験生は苦しむことになります。調和的人間を育成する立場からいえば、優先順位などつけられないのが本音です。でもそれを要求される…。そこでDさんが、優先順位については捉え方がそれぞれであり、まずはポイントを挙げていくのがいいと判断され、Dさんご自身は、相手を思いやる力がつきそうな実践を一番にしたいと述べられました。この発言では、優先順位の付け方を「実践可能性」に限定している様子がうかがえます。その意図が他の討論参加者にうまく伝わったかどうかというと、そうではありませんでした。よくも悪くも、ここから討論そのものが混迷していきます。混迷というよりはむしろ、意見提出された項目が多くて、どう順位をつければいいか困惑している状況です。それは、下記の記述にあらわれます。

 Fさんは、イロイロ登場した「豊かな人間性」形成の手立てで似通っている内容を組み合わせて提起するといいとし、他学年との交流とスポーツとボランティアをひとつにまとめ、順位をつける対象にしようと述べられました。するとEさんは組み合わせられないものとして読書の効果を挙げられ、Bさんはうなずき、さらに、教員自身の豊かな心育成も大切と主張、Eさんがこれに同意、そしてBさんが異学年交流を再度取り上げ、Eさんが異学年によるボランティア活動という…。Bさんはまた読書と日記もといわれる…。自己紹介、他己紹介もとEさんが指摘。長所の指摘、相手を尊重する授業実践…。Aさんからは掃除。Fさんはそれに対しなぜと問いかけられ、勤労の精神と答え返すAさん…。するとFさんは、掃除をすることによって感謝の心も生まれると返す…。さらにFさん持論の日記が「ありがとう日記」として主張され…、感謝の心を紙に書いてみるという実践はどうだろうかと述べられる。Cさんが道徳の問題は優先順位に必ずはいるといえば、Dさんは掃除の勤労精神も含めて道徳教育の充実ではないかと「組み合わせ」理論を再提出。Eさんはでは5つ確認しましょうといって教員の資質問題が一番とし、自己他己紹介は2番だという…。人という観点からは云々とDさんがいったところでタイムアップ。

 ということで、収拾がつかないまま討論時間がなくなってしまいました。これをどう評価するべきか。おそらく、同じテーマでどのグループが討論しようとも、混乱はあると思われます。また、他人の意見を聞く姿勢が大事であると感覚しているみなさんですから、他者がどういう意見をいったのかをいわずばなるまいと思っている。これが上のような混乱状況を生んでしまったといえます。

 結論的にグループに対する評価をいえば、「これはこれで構わない」ということになるでしょう。優先順位をつける作業ができなかったとしても、それをなんとグループで作り上げようとするプロセスが確認できれば、そこが評価されるからです。ただ、もう少しスマートに議論すれば、テーマを消化できたので、それが心残りでした。たとえば、一人ひとつだけ「豊かな人間性」に関してポイントを挙げるなど、項目を少なくする努力をすれば、順位をつけるにしても混走がなくなったかもしれません。結局、討論時間の終了後、改めて討論参加者に順位を聞いてみれば、@教員の資質、A自己他己紹介、B異学年交流、C道徳教育の充実、D読書・日記、とのようでした。

 ここで討論傍聴者も交えて議論がはじまります。反省点の指摘、足りない項目の指摘、@は資質でいいのかどうか、などでてきました。また、異学年交流といっても、それは担任としてできる仕事なのかどうか、そうでなければテーマから逸脱するとの指摘もありました。また、クラスで人間関係ができていないなら、優先順位も変わるという指摘もあり、春の学級開きのときの「豊かな人間性」形成の手段と、3学期末の手段とでは異なってくるとの指摘もありました。討論ではなかったが、「あいさつ」も「豊かな人間性」を育む最初のものだとの指摘もありました。

 やはり、このテーマは予告したように難しいものでありました。でも、みなさんが混乱しながらも何とかまとめようとしていた姿勢は、みていて微笑ましいものでした。

 キーワードを挙げておきましょう。カウンセリングの充実、人権、ゆとり、体験学習、もっとあるでしょうが、考える端緒になるでしょう。もちろん第16期中教審答申の「美しいものや自然に感動する心などの柔らかな感性/正義感や公正さを重んじる心/生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観/他人を思いやる心や社会貢献の精神/自立心、自己抑制力、責任感/他者との共生や異質なものへの寛容」は、いつもながら参照されるべきポイントでしょう。

 次回は年内最終となります。楽しくやりましょ!

 お花、ありがとう。うれしいよ〜

(2006年12月17日)

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