勉強会のお知らせページへ 勉強会報告一覧ページへ  勉強会申し込みページへ


浩の教室・第6期 第7回(通算203回)勉強会の模様

 本日は、当サイト主宰第7回(通算203回)勉強会を開催いたしました。ご参加のみなさま、お疲れさまでした。遠く、姫路や愛知からのご参加もあり、ありがたいかぎりです。今後もよろしくお願いします。さて、本日は、人権教育に関する過去問の検討からはじめました。大阪府1次試験の解答解説でありましたが、各選択肢の出典部分の明示も含め、みなさんと検討してまいりました。プリント5枚程度のすべてを読むことはできませんでしたけれども、ご自宅で資料を再読してください。来週も人権教育関連問題となります。

 次に、ワタクシから講義をいたしました。講義といっても一方通行ではおもしろくありませんので、みなさんに質問しながらすすめるものです。今回は、資本主義社会の中での教育の意義について、評価、学歴社会、生涯学習を絡めながらご意見をお聞きしていきました。まだまだ問題点はあると思いますが、議論の展開はおわかりいただけたと思います。途中、Tさんの「学歴社会が前提としてあって、生涯学習社会に接続する」との考え方が提示されて、ちょっと、いい意味で考え込んじゃいましたね。社会の在り方が加速度的に変質していくのに「教育」がついていっていないということも問題になりました。このあたりの議論は教採対策としては超えていますけれども、討論の種にはなりますね。いまは、参加者がそれぞれ自分なりの教育観を形成していく時期ですから、ドシドシいろんな考え方に接し、批判的吸収に努めましょう。

 最後に、集団討論でした。今回も、イロイロ問題がでましたね。テーマは、「生徒を犯罪から守るためにはどうすればよいか、議論してください」といたしました。このテーマは、今年の夏に大阪府で出題されたものです。挑戦者は6名、20分間です。いつものように、仮にA〜Fさんとして、発言を追ってまいります。

 まず発言されたのは、Fさんでした。テーマを確認されつつ、児童生徒には自分自身で自分の身を守る自覚をもたせることが第一歩であると述べられ、「いかのおすし」を話題にされました。危機回避能力の向上を焦点におかれた発言です。Dさんは、現在山深い場所にある小学校で講師をされており、自転車通学が一般である実情から、校区外にいかないという注意や、どこにいくのか保護者に伝えておくことを挙げられ、テーマに接近しようとされます。Cさんは、都市部では事件が多発している現在の社会状況に鑑み、児童生徒に非がなくても犯罪をする大人がいることを理解させるということを、保護者と連携してすすめたいとおっしゃいます。Cさんが発言された集団登下校は、ひとつの具体的な例でした。

 Eさんは、犯罪が起こる環境、背景に触れ、たとえば夜の塾通いでは一人で帰らない、繁華街の暗い路地は極力避けるというように、これまた具体的な注意点を提出されました。EさんもCさんと同じく何もしていなくても犯罪に巻き込まれる可能性があることを述べつつ、予防的姿勢を持つことを推奨されます。Aさんはバスケ部の顧問であった経験から、放課後下校時における不審者事件について発言されました。この点、Dさんは、児童生徒への不審者情報の周知を管理職にも伝え、さらに保護者に伝えると付け加えられました。Bさんも、メールなど情報手段を活用し、地域や警察とも連携して不審者情報の共有することが、児童生徒を犯罪から身を守る防衛措置として有効だと述べられました。

 さて、これで、すべての討論参加者の発言が揃いました。ここから議論はどのように展開するのでしょうか。

 ここでFさんから刺激的な報告的意見がありました。FさんはK市で勤務されていらっしゃいますが、そこで小学生殺人事件があったといわれます。この事件を期に防犯意識が高まり、地域の人びとの子どもたちを見守る態度が変化したと述べられたのです。ここから、地域の防犯にどのように学校が協力していくか、また逆に学校の防犯意識を地域にどう浸透させていくかの議論となっていきます。Fさんご自身も、地域の住民に子どもたちの顔が知られるようになるのはよいことであるとみなし、気軽に声を掛けあえる関係形成に期待されているようでした。

 Aさんは、はっきりと地域と学校の危機回避面における連携といわれたのはよかったのですが、ことさらその連携が機能していないと主張されたのはいただけないかもしれません。その主張は正しいでしょう。しかし、あまり批判的に捉えても仕方がないからです。批判的に捉えた後の提言がなければ、いいっ放しになってしまいます。この点は、ある種の癖といいますか、直すべきポイントといえます。ただし、これにつづく総合学習や道徳教育において、危機回避の授業を実施し、たとえば犯罪防止教室を開催すると展開されたり、通学路マップを作成したりとのご意見は建設的でよかったです。とすると、表現、いい回しの工夫が必要ということですね。

 Cさんは、Aさんから学校でなにをすべきかとご意見があったのにつづけて、学習指導要領との関連性からご意見されます。つまり、多様な事件において、加害、被害にかかわらず当事者が低年齢化している状況を憂い、学習指導要領総則、「第1 教育課程編成の一般方針 2」の、「特に児童が基本的な生活習慣、社会生活上のきまりを身に付け、善悪を判断し、人間としてしてはならないことをしないようにすることなどに配慮しなければならない」との規定を報告し、ここから道徳教育に力を入れることが犯罪の抑止と予防につながるとご意見されます。学校現場で「教員のお金を盗る」事件が発生したことについても触れられ、臨場感ある報告的意見となりました。児童生徒の道徳心がもみ消されているとの発言には、驚くとともに同意せざるを得ない現状が横たわっているのだなと痛感しました。そうした状況は、Dさんがいわれたように、児童生徒のさみしい気持ちがあるのかもしれません。友人関係や学習のことで悩む児童生徒もいれば、家庭環境に起因する問題を抱えている児童生徒もいます。そこにさみしい気持ちが宿り、あるいは犯罪に巻き込まれたり、犯罪を引き起こしたりするケースもある。学校でできることは、そうしたさみしさをなくすことでしょう。Dさんは、だからこそ、集団で遊ぶことを強調されたわけです。「きみは一人ではないのだよ」のメッセージは、どんな教室を開催するよりも効果的な犯罪防止の方策なのかもしれませんね。

 Aさんがここで視点を変えられ、行政政策を話題におかれました。たとえば、犯罪を引き起こしてしまう遠因に、暴力的なビデオやゲームの影響があるとすれば、これを規制するのはどうだろうかと。その昔、ファイトクラブやビートたけし主演の生き残りをかけてお互いに殺していく映画がありました。このようなR指定をかけるべき映像に対して、もっと迅速な対応が行政には必要であるとのご意見でした。この観点も、このテーマの議論には必要でしょう。

 Eさんからは、犯罪を引き起こすのを防止するためにこそ、心の教育が必要との立場です。些細なことであっても、悪いことをしてしまったなら、なぜその行為が悪いのかを考えさせることが大切な指導であると力強く述べられました。叱られた、謝った、無罪放免では、的確な指導がされたとはいいがたく、反省をどう次に生かすのかを自覚させてはじめて指導が貫徹すると主張されます。「やったことは消えない」は厳しい言葉ではありましたが、しかし真実であって、やっていいことと悪いことが厳然とあり、取り返しのつかない事態にならないようにするためには、こうした毅然とした態度が小学校の頃から不可欠といえるでしょう。

 このEさんの発言につづき、Aさんは、少し視点を変え、行政の対応についてのご意見を提出されました。いわゆるアクションプランの実施を徹底するという発言であり、保護者にその主旨の徹底周知を求めるものです。

 あらかた討論参加者からのご意見が出てしまったような雰囲気の中で、Dさんが、原点に戻ってテーマに接近しようとされます。Dさんは、不審者情報の共有の議論ほかこれまで登場したご意見をまとめ、さらにインターネット犯罪について述べられます。インターネットを介したゲームが流行っており、そこでの遊びも含めてインターネットには匿名性があるようでないということを児童生徒に自覚させたいと発言されました。犯罪やいじめの温床になることが危惧されているインターネットの世界について言及し、テーマの児童生徒をどのようにして犯罪から身を守らせるかを考えさせるご意見です。このことに関連し、Aさんは児童生徒の運営する個人ホームページについて経験談的ご意見を述べられます。

 児童生徒の運営するあるホームページには、個人情報がすべて出ているものがって、どう対応するか困ったというものです。プライベートをすべてさらしてしまい、たとえそれを児童生徒本人がよしとしていても問題があるのではないか、ということで、犯罪から身を守るためには適切な指導が必要であるといわれます。しかし、そこまで教員が踏み込んで指導するべきなのかどうか。こうしt板ばさみ状況は、昨今よくあることですね。不特定多数の人びとに自分の個人情報を知られることがどれほど危険であるのか、そのことは、道徳の時間や情報科の授業において、指導されるべき課題といえます。

 Fさんもインターネットを介した犯罪は今後も増えると予想し、個人情報の悪用について危惧されています。実際に、「せんせい、わたしのホームページをみて」と紹介されたそのサイトに、自分の氏名ほか個人情報が載っているわけで、ネット上の危機意識の希薄さに驚かれたそうです。あるいは詐欺、あるいはいじめに巻き込まれる可能性があるホームページ運営については、たとえ学校外のことといえども、教員が一定程度注意を喚起しないとなりません。

 さて、これで今回の討論は終了しました。討論終了後の反省的な意見交換の場で出てきたのは、まずはもっと簡単な(というと語弊がありますけれども)万引きであるとか交通事故であるとか、身近な犯罪、事故からいかに身を守るかといった視点がなかったことが問題になりました。喫煙や飲酒、ケンカに巻き込まれる、薬物も同様です。ここから具体的なご意見としては、犯罪防止教室の開催や学校安全マップの作成などが挙がりました。教科教育を通して、自分の言葉を持つことが、危機回避につながるとのご意見もありました。

 また、特別支援学校に関連しては、知的障害のある児童生徒が学校の中で女性教諭に性的関心を高めてしまうケースがあり、それを学校外でしてしまったら犯罪になるということをどのように理解させるかという問題も提出されました。このように、加害者になってしまうほか、高校など広域の移動になると、電車通学の場合では痴漢被害ということも生じます。特別支援学校であろうと、そうでなかろうと、児童生徒が被害者にも加害者にもなるということです。

 犯罪からどのようにして身を守るよう指導するかがテーマだったわけですけれども、テーマを転回させ、加害者になるケースをも議論して幅を広げ、集団討論の深まりを求めていくのは、反則ではないでしょう。

 さて、あすの月曜祝日も、集団討論をいたします。テーマは、「児童生徒の自尊感情を高めるためには、どうすればいいでしょうか」です。もう何度もワタクシはこのテーマの議論を聞いているのですけど、参加者が変わると違ってくるものです。ためになる議論をお願いします。

(2008年11月16日)

戻る 浩の教室・トップページへ