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浩の教室・第14期 第26回(通算788回)勉強会の模様

 先週末に勉強会にご参加いただいたみなさま、お疲れさまでした。当日は、個人面接と集団討論の練習を実施しました。ここでは、個人面接の練習風景を紹介することはできませんが、討論の模様は文字起こしして紹介することにいたしましょう。

 今回のテーマは、「道徳教育について広く語ってください」というものでした。テーマを1行であらわしますとこうなりますが、その前に枕詞のように、「道徳の教科書ができますが」とか、「特別の教科道徳がはじまりますが」とか、「某小学校の件で教育勅語が云々されていますが」とか、なにかしらこちらのほうからお話しました。これは、面接官が討論のヒントを与えているわけであり、そこを聞き漏らしてはなりません。したがって、教室に入ってからはすべてのことがヒントであるという姿勢で臨むべきですね。

 さて今回は22分間で6名の方がチャレンジしてくださいました。校種はバラバラでして、小学校志望者、高等学校志望者に特別支援の志望者もいらっしゃいました。それがまた議論を平坦なものに終始することなく、議論を深められた理由であったかと思われます。仮にA〜Fさんとします。まず、Dさんが、討論をはじめるにあたって、実践例を出していきましょう、というように述べられました。この発言はよいような、悪いような口火の切り出しでした。第1発言は、堂々とテーマの確認をし、その後、方針や構想について一言するのがベストです。第1発言は緊張するものですけれども、討論のできを決定するほど重要なものでありますから、注意してほしいところです。

 Fさんがつづいて発言されました。Fさんは、道徳教育の問題点として、ある一定の価値観を押し付ける風潮があるということに触れられ、それがよろしいことではないと前提し、道徳的な行動そのものを考えさせることが実践の上でも大切であろうと述べられました。行動を思考し、判断することによって、道徳性が育成されるという立場です。具体的にはいじめのケースがあると付け加えられました。この発言を受け、Bさんは、従来型の道徳教育ではなく、中教審でも議論になった「考える道徳」という言葉を提出され、活動を取り入れた道徳教育の推進ということについて意見を出されました。道徳に関するグループ討議を行い意見を出させあうような授業を構想されているようです。問題はBさんは高校志望なので、特別の教科道徳は実施しないことを踏まえた上での発言に修正するべきでしょう。それはまた、同じく高校志望のFさんの注意するべき点でもあります。ということは高等学校における道徳教育をどう実施していくべきかという課題を議論することになります。もちろん高校における道徳教育は学校教育全体において行うことになっています。それを特別活動や生徒指導と絡めて話を組み立てることが重要でしょう。

 ここでは小学校志望者もいらっしゃいます。BさんにつづいてEさんが、小学校3年生の担任をしたときのことを報告されます。従来的な道徳教育として読み物資料を活用した授業もあるが、たとえばいいところみつけを実施し、自分について知る、クラスのお友達について知るのも道徳性の育成につながると考えられています。そこでは相互に理解しあうことによってお友達のいいところも問題も発見されるといい、友人からどのようにみられているのかわかるほか、みているようでみていなかったお友達のよいところも知ることができると発言されました。Aさんも小学校志望者ですが、このEさんの発言を受けながらも、道徳教育では自分自身のことについて省察するほか、相手のこと、家庭のこと、自然のことなどいろいろなものを対象にして考えていくことが大切であると述べられます。こうした各テーマに対し道徳教育の方法論として意見交換ということを尊重するのがいいのではないかと付け加えられました。

 Dさんは、特別支援の立場から話されます。特別支援の小学部では、他教科の中で道徳教育を実施していたといわれます。たとえば公共機関の利用におけるマナー、つまり切符の販売機でうまく買えること、横はいりしてはダメなことなど、体験的な練習を道徳問題として捉えて繰り返すのが効果的であったことなどです。

 高校志望のCさんは、個人として実践倫理を考え実践していくことがこれまでの校種で積んできた道徳性を開花させると捉えられています。時事的な問題として教育勅語のことが話題となっているし、人権の問題も高校生であれば多少は深く考えなければならない。だから、いい悪いをいうのではなく、まさに議論することが大切ではないかという高校における道徳教育の立場です。

 これまで登場した議論する道徳ということに関し、Eさんから読み物資料を使って議論させてみるというのは思った以上に難しい授業になるということ、だから、教員からある程度話題提供しなければならないということを指摘されました。

 つづいて発言されたのは、ごく簡単に挿入的ではありましたがCさんでした。話し合わせるのはいいが解答を求めるのではないという一言です。これと関連し、Fさんからは、道徳に関し教員から話題提供する場合には押し付けにならないように注意するべきであるということでした。道徳の事例検討ではプロセス理解を促し、たとえばなぜそんな心情になったのかといったことを考えさせるべきであると述べられます。Aさんから、小学校低学年の道徳のことで問題提起がありました。さきほどの押し付けの問題とかかわって、ある行為についていい悪いが判断できない低学年にあっては教員が示すのもよい、ということです。高学年や中学校では話し合わせる道徳の授業が成立するけれども、話のポイントを教員が指し示すのはよいのではないかと校種の違いから来る問題点を指摘されました。この点、特別支援のDさんからも、社会の様々なことを知らない小学部の児童にあっては、お題を出してやることも手法のひとつであり、倫理観は本人が徐々に納得して確立していくものであると指摘されます。

 こうした議論をまとめるようなご意見がFさんから提出されました。道徳教育の方向性について初等教育から中等教育にかけて段階的に取り組まなければならないこと、そして高校志望のFさんにあっては、理性的、論理的に道徳的考察を加えていかなければならないことです。むかし、「ひとを殺してはなぜいけないのか」という議論がありましたが、このようなことも高校では議論の範囲内であるとし、悲しいという感情をいまいちど考えてみる契機になると話されました。Cさんは、この発言を受けて、絶対に悪いこと、してはならないことが世の中にはあるけれど、それがなぜダメであるのかを考えてみるのも思考力の育成という点ではいいのではないかと応答されました。また、Eさんからは、なぜダメなのかの「ダメ」に注目し、それがひととしてダメなのかを考えることによって、他の人とどのような関係性を持って生きていくのかを考えることができるとされます。Eさんはここで話題をふくらまし、もうすぐ特別の教科道徳がはじまるけれども、そこでは評価の問題がでてくる、さきほどのなぜ「ダメ」なのかを考えることをどうどう評価するべきかと問題を提出されました。

 ここで一区切りついたようで、Bさんが話題を転換し、特別のの教科道徳の教科化をどう考えるかということを議論のポイントにおこうとされました。Eさんがこれに応答し、来年度から教科道徳ははじまるけれども、どういうふうに実践していくかは、価値観の押し付けではなく「考える」メソッドで極力実践していきたいとのニュアンスで話されました。Dさんからは、教科化されることによって、そのメリットを教員が改めて考える機会になったとし、これまでふわふわだった道徳の時間をよりよく考える、議論する道徳にする契機となったと述べられました。

 Aさんは、教科化に期待しているようです。というのは、規範意識の低下を講師経験から実感しているからです。その是正に教科化のメリットがあると捉えられています。FさんはI県志望であり、I県は、高校では数少ない道徳の時間実践県です。高校でもいじめの問題があるので、やっていいことと悪いことの判断力を高度に身に付けさせ、いじめ問題を考えさせたいと抱負を語られました。Bさんは高校のことが話題に出たことにかかわって、高校では人権学習に取り組んでいきたいといわれ、さらに、小中高の交流を通し一貫した流れのある道徳教育を構想できないかと提案されます。Cさんも高校志望の立場から、日本史で取り扱う被差別の歴史について深く考察することがひとつの目標になろうと述べられました。最後にDさんから、小中と学習してきた差別撤廃の理論と歴史について理解させるポイントを総括し、たとえば中学段階ではどこまで学び考えさせるべきであるかを学習指導要領における規定ともかかわらせながら考えてまいりましょうとまとめられ、集団討論は幕を閉じました。

 これまで記してきたように、道徳教育をめぐる集団討論は傍聴していて楽しいものであった。ということは評価も上々ということである。本試験においても、この程度できれば、全員の方が合格しても不思議ではない。

 今回、校種混合であるにもかかわらず、討論が充実したのは、参加者のみなさんが道徳教育についてしっかり勉強していたからにほかならない。道徳の教科化や教科書の採用など、1958(昭和33)年以来の大改革がほどこされた道徳については、討論のテーマとなるだけでなく、マークシートの問題としても出題可能性が高い。じっくり勉強しておかれることを期待しています。


(2017年4月8日)

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