教養教育 中教審答申のキーワードと解説

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 今次の答申から、第○期との表示がなくなった。中教審自体の再編成にその理由を見出すほかに、このことは、結果的に、教育行政の骨格を築き上げる理念的な性格を持つ答申が、すでに17期までに出揃ったことを意味しているのではないか。大枠を固めたあと、個別のテーマに関心が集まる。この「教養教育」の答申や、「教員免許制度」、「青少年の奉仕活動」を論じた答申は、15、16期答申を個別の視角から深化、補強するところに特色がある。重要事項と思われることに関し、ごく簡単な説明を加えておきたい。教採に必要なことに絞ってとりあげる。たった10項目である。

「新しい時代における教養教育の在り方について」
平成14(2002)年2月21日


教養教育の必要性・・・21世紀の社会は急激な速度で変貌しつつある。産業構造の変質、グローバルな政治環境のなかで、人びとの価値観が多様化し、既存の価値観では通用しない社会になった。価値の喪失ともいえるこの状況を切り開くには、目的意識を持った若者が、自分の位置を確かめつつ目標を設定し、その実現に向かい努力しなければならない。そのちからを「教養」と考える。

品格のある社会・・・教養の必要性は個人の問題にとどまらない。各個人が教養を深めれば、その集合体としての社会は魅力的な様相をみせる。この意味で、各個人の教養は、よりよい社会を構築するための基盤といえよう。

教養の定義・・・答申でいわれるところの教養とは、個人が社会と関わり、経験を積み、体系的な知識や知恵を獲得する過程で身に付けるべきものの見方、価値観の総体を指す。それは、知的側面、規範意識、倫理性、バランス感覚、体力や精神力など多面的に構成される。

国語の力・・・普遍的な教養として、教養そのものを深めるのに欠かせない道具的な力が「国語の力」である。初等教育段階で論理的な思考や表現力を定着させるには、言葉をうまく操れなければならないということである。ただし、国語力の養成が日本人のアイデンティティの確立、豊かな情緒の涵養と同時に語られている点は注意されなければならない。

修養的教養・・・礼儀作法など「型」から入ることを強調。これを身体感覚の教養形成と捉えている。教養の基盤に「我が国の生活文化・伝統文化」を置こうとする政府文教族の思惑が透けて見える。

教養教育は生涯の課題という考え方・・・生涯学習審議会答申の提言を引き継ぐような格好で、人生いつでも教養を深めなければならないという立場から、「幼・少年期」、「青年期」、「成人期」の3つの時期にわけ、それぞれの時期における教養を模索させようとする。

「幼・少年期」・・・家庭や地域で子どもたちの豊かな知恵を育てるため、我が家の決まりを作ったり、しつけの充実が提唱される。そのほか、文化施設の充実、地域社会における子どもの居場所を青少年教育施設に見出す。基礎学力の充実のため反復学習の奨励、読書指導の重視、教育活動の自己点検のための評価制度の改善を各学校で全国的に進める。学ぶ意欲を培うには、子どもの知的好奇心を刺激する体験活動を教育課程に取り入れ、発展的な学習に向けて指導方法を充実させるとともに、つまずきをすばやく見つける方法も開発する。道徳教育、知徳体の調和のとれた人間形成をめざし、豊かな人間性を実現させる。教員には、以上の実現のため、研修や自己啓発を求められることとなる。

「青年期」(高校)・・・論理的に粘り強く考える力を養成するため、「思索の記録」、「創作活動」、「卒業論文」などのいわば「授業」を、高等学校に新規。生徒の問題意識を掘り起こすような展開を授業に求め、表現力を育成。「必読書30冊」の選定と理科教育の充実。大学での学習を視野にいれ、学習意欲を継続させる工夫をし、また、職業とのつながりを考えさせる学習を展開し、「将来」を生徒たちに意識させる。異文化体験の推進も。

「青年期」(大学)・・・理系、文系などの従来の縦割りでは、今後のグローバルな学問の在り方を追求することができない。専門分野の枠を超える知的な技法を獲得させ、人間存在に対する深い洞察、現実世界の把握のための力を育む制度を整備する。教養教育の再構築なしに大学の存続はありえないとの強い危機感を持って、この制度化に邁進すべき。こうした提案のどこが「具体的」なのかわかりにくいが、「感銘と感動を与え知的好奇心を喚起する授業」をする。外国語能力、情報処理能力の伸張は、今までの提言と変わらず新鮮味がないといえる。「教養教育重点大学(仮称)」の支援。異文化交流の推進、休学など「寄り道」してボランティア活動をしてもいい。そして、そうした態度を社会が認め評価する必要がある、という。

「成人期」・・・主体性を持った社会の一員であろうと個人が努力せよ、という精神論。大人が生涯にわたってイキイキと自己実現を目指せば、子どもはそれを見習い目標を立てられるという楽観論。教養を尊重する社会の実現に向けた気運を醸成せよというが、具体策は見えない。産業界やマスコミにその役割を期待する。大人の学びの成果を社会に生かすような制度整頓。NPO活動。学ぶ機会はサテライトキャンパス、放送大学に依頼、社会教育施設の充実と、落ち着くところに落ち着くほかない。

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