教員免許状 中教審答申のキーワードと解説

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 この答申は、就学前教育から高等学校教育までを一貫して視野に入れ指導していける教員を養成する立場から、教員の免許制度を総合的、弾力的に捉え直そうという提言である。その実態は、教員免許の更新制の準備にまで踏み込み、教員免許法の改正を意図し、教育制度の抜本的な改革を試みようとするものである。ひらたくいうと、「今後の教員は、教科や校種を問わず複数の免許を持ち、常に指導力を高めるよう自己研鑚に励みなさいよ。10年毎くらいにチェックしますからね。でも他の公務員に更新制はないし、その調整もあるからいま考えているところです」という文部科学省のお達しである。問題がないわけではないが、概ね、教員世界そのものを改善していこうとする点では評価できる答申である。なぜなら、「指導力不足」の教員が存在するのは現実であるし、教員の指導力のレベルアップは、ワタクシたち国民の利益になるからである。非常に分量の多い答申であるが、思いきって10項目にのみ絞って言及してみた。

「今後の教員免許制度の在り方について」
平成14(2002)年2月21日


相当免許状主義・・・教育職員免許法にしたがい、現行の教員免許は、小・中・高・幼・盲・聾・養護の学校種別に授与され、さらに中等教育においては教科別に授与されている。この授与形態を「相当免許状主義」という。免許法の第3条第1項の規定によれば、教員は、免許法により授与される各「相当」の免許状を有する者でなければならない。

教員免許の総合化・弾力化の根拠・・・学校種別に区分されている教員免許状は、幼児児童生徒の発達状況に見合った合理的根拠を必ずしも持っているとはいえない。その理由は、第一に、幼児児童生徒の身体の発達に早熟傾向が確認される一方、社会環境の激しい変化に晒され、生活の自立に必要となる行動様式の習得や進路意識の面において遅れがみられる。このように心身の発達において個人差が広がる傾向が明らかとなっている。現行免許状制度ではこのアンヴィヴァレントな傾向にしっくり対応できないというところにある。第二に、後期中等教育が広く普及し、幼児期から高等学校段階までを一貫したものと捉え指導することが必要であり、各学校段階間の連携を一層強化することが求められている点にある。

教員免許の総合化・弾力化・・・教員免許状の総合化とは、現在の学校種別の免許状を複数校種で一括することなどを意味する。たとえば、幼小を一括した「初等教育免許状」、小中を一括した「義務教育免許状」、中高一括の「中等教育免許状」なども提案にのぼっている。これに対し、教員免許状の弾力化は、現行の相当免許状主義を原則としつつ、その例外措置(特別非常勤制度、免許外教科担任の許可、小学校専科教科担任、自立活動免許状)を認め実施することを意味する。例外措置は、既に教員免許状が弾力化されている例といえよう。

小学校教員の課題と展望・・・現在、小学校においては、「学習集団」と「生活集団」とが一致したクラスを担当する全教科担任制=学級担任制が基本である。だが、小学校高学年では専科指導を充実し、その多様な指導法も摸索されるべきである。したがって、総合学習も含め、教科に関する専門性の高い教員が担当できるよう免許制度上の措置を企図することが重要となる。たとえば国際理解に関する学習の一環として外国語会話等の学習活動を行ったり、情報に関する学習を行ったりする際、小学校の教員は養成段階で専門的にこれらを学んでいないなど、小学校の各教科に含まれていない分野を指導できる教員の確保なども検討課題といえる。

教育経験を免許取得に反映する制度の創設・・・現状では、現役の教員が他校種の免許状をとる場合、教員資格認定試験に合格する方法を除き、大学で所要の単位を修得するほかない。隣接校種への理解や教員の複数校種での「双方向」の交流の促進を図るため、現役教員が他校種の免許状を取得する際、教職経験を評価することによってその取得を促進する制度の創設を図るべき。そうすれば、幼稚園教員が小学校の各教科の指導に関する専門性を身に付けつつ小学校免許状を取得することにより、小学校低学年等での指導を行なえる。また、小学校教員がある特定の教科に関する専門性や生徒指導の専門性を身に付け、中学校での指導を行ったり、高等学校教員が教職の専門性を身に付けることにより、小・中学校における指導を行なったりすることが促進されると考える。

小学校専科担任の拡大・・・現在、小学校の専科を担当するのは、免許法のうえで、中学校の音楽、美術等いわゆる副次教科の指導をすることに限られている。そこで、この答申では、他校種免許状による小学校での専科担任制の分野の限定等を撤廃しようと主張されている。例えば、中学校または高等学校理科免許状を有する教員が小学校の理科を、中学校または高等学校数学免許状を有する教員が小学校の算数を担任できるようにするなどの措置を行なうということである。この拡大は、教員採用に関しても制度変更を迫る提案である。

教員の適格性の確保のための免許更新制・・・教師の意欲や努力が正当に評価される体制作りのため、教育改革国民会議最終報告を受け、教員免許の終身有効性を見直したい。現在、教員には、教職への使命感、情熱を持ち、子どもたちとの信頼関係を築くことのできる適格性の確保、教科指導、生徒指導等における専門性の向上が求められている。これを採用制度、勤務評定、研修制度の充実を通して実現したい。すなわち、教員としての適格性を調査するのに更新制の意義が認められるのではないか、専門性向上のゆえに更新毎に研修を受けさせればいいのではないか、ということ。だが、現時点における我が国全体の資格制度や公務員制度と比較すれば、教員にのみ更新制を導入することにはなお慎重にならざるを得ないと回答。

教員の資質向上をめぐって・・・教員の資質向上のための具体的な方策は以下のようである。指導力不足教員等に対する人事管理システムの構築、教員免許状の取上げ事由の強化、人物重視の教員採用の一層の推進、教職10年を経過した教員に対する新たな研修の構築、学校における研修の充実、自主研修の活性化、研修実績の活用など。

特別免許状とは・・・特別免許状は、学士の学位、担当する教科の専門的知識・技能、社会的信望、熱意と識見を持つ者に対し、その者を教員として任命または雇用しようとする者(教育委員会、学校法人等)の推薦に基づき、大学学長や各校種校長など学識経験者からの意見聴取を経て、教育職員検定により授与される。その効力は、5年以上10年以内で教育委員会規則で定める期間、授与した都道府県内のみで有効。なお、平成12年の免許法改正により、特別免許状を有する教員が3年以上の在職年数と所定の単位修得により普通免許状を取得できることとなった。

社会人の活用を目指した特別免許状とは・・・「生きる力」の育成に対応していくため、優れた知識・技術を持つ学校外の社会人を学校教育に積極的に活用していくことが必要である。そのため、教職に関する専門性を有する教員に加え、学校外の優れた社会人の力を借りることが不可欠となりつつある。また、このことは、我が国の社会システムが共通に抱える弱点である同質社会的傾向を学校組織を舞台に揺り動かし、その活性化に資するものと考える。ただ、本当に教職教養を学ばず、教員としての資質が備わるかどうかは疑問。

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