当面の教育課程 中教審答申のキーワードと解説

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 いま、文部科学省は厳しい立場に追い込まれている。教育論者からは、「ゆとりの中で生きる力をはぐくむ」の方針を批判され、学力低下論が幅を利かせている。保護者の方でも、薄い教科書に不安を感じている。本答申は第15期中教審答申で提言された「生きる力」を育むねらいが教育の根本方針であるという立場を死守しようとしているが、客観的にいえば、文科省は、教育方針の自己修正を迫られることになったのである。それがどのような内容であるのか確認したい。本答申の提言が、平成15年一部改正学習指導要領に反映されているのはいうまでもない。ここでは8点にまとめてみた。

「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」
平成15(2003)年10月7日

平成10年改訂学習指導要領の実施状況と課題・・・平成10年改訂学習指導要領のねらいを踏まえた取組とそうでないものに分かれている状況がみられるのはなぜか。それは、国や各教育委員会において、変化の激しい社会の状況、そのために子どもたちに求められる資質や能力などの学習指導要領のよって立つ背景、これを踏まえて学習指導要領が基本的なねらいとしている点等について、各学校や国民一般に対する周知が結果として不十分となっているからである。

本答申の基本的立場・・・今回の当面の充実・改善方策についての答申においては、まずは「生きる力」を知の側面からとらえた「確かな学力」をはぐくむため、学習指導要領に示されている共通に指導すべき基礎的・基本的な内容を確実に定着させること、各学校における創意工夫を生かした特色ある取組を充実させることを提案する。このために、基礎的・基本的な内容の確実な定着、個性を生かす教育の充実を目指して、教えるべき内容・考えさせるべき内容に応じて教員が必要な指導を行い、個に応じた指導などの工夫をした「わかる授業」を一層推進する。同時に、「総合的な学習の時間」を通じて体験的・問題解決的な学習活動を展開する。

答申の提示する学力の内容・・・今後の教育の課題は、個性を発揮し、主体的・創造的に生き、未来を切り拓くたくましい人間の育成を目指し、直面する課題を乗り越えて生涯にわたり学び続ける力をはぐくむことである。このために子どもたちに求められる「確かな学力」は、知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や、自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力等までを含めたものである。これからの学校教育では、「生きる力」という生涯学習の基礎的な資質や能力を育成する観点から、「確かな学力」を重視すべきであると考える。「知識や技能はもちろんのこと」と主張するのは、自己修正にほかならない。

「確かな学力」育成の観点・・・「生きる力」が生涯にわたり実社会を主体的に生きていくための力であることに鑑み、子どもたちが知識や技能を剥落させることなく自分の身に付いたものとする、それを実生活で生きて働く力とする、思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲などを高める等の観点から、知識や技能と生活の結び付き、知識や技能と思考力・判断力・表現力の相互の関連付け、深化・総合化を図ることが重要な視点となる。さらに、好奇心を持たせることや、子どもたちと実社会とのかかわりという観点から、社会の仕組みと個人のかかわりに関する理解を深めさせ、勤労観・職業観を育成し、生き方・在り方を考えさせることなども重要となる。

学習指導要領の「基準性」の明確化・・・各学校においては、まずは児童生徒に学習指導要領の各教科等及び各学年等に示された内容の確実な定着を図ることが求められている。この指導を十分に行った上で、個性を生かす教育を充実する観点から、児童生徒の実態に応じ、学習指導要領に示されていない内容を加えて指導することも考える必要がある。そうすれば、共通に指導した内容についてさらに知識を深め、技能を高めたり、思考力・判断力を高め、表現力を豊かにしたり、学習意欲を高めたりすることも期待される。こうした性格のことを「基準性」と答申は考えている。

「はどめ規定」とはなにか・・・はどめ規定とは、各教科に示された指導内容に関して「〜は扱わないものとする」などの取り扱う内容の範囲や程度を明確にする記述のことである。このほか、「〜については○種類又は△種類扱う」などの事例数等の範囲や程度を明確にする記述が「内容の取扱い」において示されている。これは、すべての児童生徒に指導するに当たっての範囲や程度を明確にしたり、学習指導が網羅的・羅列的にならないようにしたりするための規定である。したがって、必要に応じ児童生徒の実態等を踏まえて個性を生かす教育を行う場合、この規定にかかわらず学習指導要領に示されていない内容を指導することも可能となる。

「総合学習」の一層の充実・・・「総合学習」を一層充実させる観点から、「生きる力」をはぐくむという趣旨、および、各教科等で身に付けた資質や能力相互の関連付け、深化・総合化の観点や計画的な指導、学年間・学校間・学校段階間の連携などが重要であることを明確化する。したがって、各教科、道徳、特別活動等を含めた学校の教育活動全体の中での「総合学習」の位置付けと意義を明確に意識することが各学校には求められる。すなわち、各学年の「目標」・「内容」を含めて「総合学習」についての「全体計画」を作成し、具体的な指導の改善、評価の在り方、学年間・学校段階間の連携、円滑な実施のための指導体制等について、自己評価を実施することにより、取り組み内容を不断に検証する。指導に当たっては、教員が明確な目標及び内容を設定して行き届いた指導を行ない、各教科等における学習との関連、知識や技能と生活との結び付きに配慮しつつ、学びへの動機付けを図る指導を行なうその際、学校図書館等の活用をはじめ社会教育施設との連携・協力、地域の施設や経験豊かな人材など多様な教育資源の把握・活用を進める。

「個に応じた指導」の充実・・・学習内容の習熟の程度に応じた指導」、「補充的な学習」、「発展的な学習」について効果があがっている現状に鑑み、学習指導要領の記述を見直し、取り扱うことができるよう提言。その際には、児童生徒に優越感や劣等感を生じさせたり、学習集団による学習内容の分化が長期化・固定化して学習意欲を低下させたりすることのないよう注意し、指導の方法や体制を工夫する。すなわち「補充的な学習」、「発展的な学習」を実施する際には、それぞれのねらいを明らかにし、扱う内容と学習指導要領に示される各教科等の目標や内容との関係を明確にして取り組む。「補充的な学習」を行なう場合、様々な指導方法や指導体制の工夫・改善を進め、当該学年までに学習する内容の確実な定着を図る。また「発展的な学習」を行なう場合、児童生徒の負担過重とならないように適切に導入することが期待される。

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