新教育基本法 中教審答申のキーワードと解説

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 戦後日本の歴史的発展は、高度に組織化された政治経済システムに負っている。精緻な官僚機構は企業もこれを模倣し、経済成長を躍進させた。そこに人材を供給してきたのが、現代公教育制度であった。今日、その機能不全が喧騒され、臨教審、90年代中教審と、改革志向が強まってきた。その究極の議論として、国家の教育理念としての教育基本法が改正されようとしている。ここでは、答申そのものの主張を18のポイントに整理してみた。

「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」
平成15(2003)年3月20日

「改正」の意図・・・戦後50有余年、国内的には、社会構造だけでなく社会意識も変容を遂げた。その変容のベクトルは、さらに現代社会に対し大きな変貌をもたらす力を備えている。国際的には、日本の責任が急上昇し、世界的貢献を求める声が大きい。そうしたベクトルが期待されている。両者の自覚の下、教育理念も変化せざるをえない。現行教育基本法の普遍的理念を継承しつつ、教育の病理現象の解消も視野にいれ、今日的視点から教育の在り方を再検討し、基本法の「改正」を目指す。

5つの目標の実現・・・生涯にわたって成長する意欲をもった「自己実現を目指す自立した人間の育成」、社会生活上最低限必要な規範意識と創造的な生き方を可能とする身体能力をもった「豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成」、基礎を踏まえ探究心、創造力を伸ばし人類の発展に寄与する「『知』の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成」、国や社会の問題を自分の課題と捉え、その解決の行動力を伴った「新しい『公共』を創造し、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成」、自国に誇りをもち尊重しつつ、他国にも敬意を忘れない「日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成」を目指す。そのため教育制度、施策を再考し、教育振興基本計画を策定する。

改正の概要・・・日本国憲法の精神に沿って生まれた「人格の完成」という教育理念などを温存し、教育の普遍性を備えるのが改正の出発点とされる。その前提にたって、信頼される学校教育を確立し、国際競争力を高めつつ人類の発展に寄与するための大学及び大学院改革を推進する。また家庭の教育力の回復と学校、地域を含めた三者の絆を強め、「公共」に参画する意識や態度を涵養する。伝統文化を尊重し「国を愛する心」を育む。「国を愛する心」とバランスよく国際社会の一員たることを自覚する。生涯学習社会の実現を目指す。教育振興基本計画をまとめ、これに法的根拠を与え、政府全体で実行する。

具体的な改正の方向性@・・・一人ひとりの自己実現が人格の完成を可能にするという立場から、個性・能力を豊かにし、未知の事柄を果断に探究する創造性を涵養すること。

具体的な改正の方向性A・・・自然を尊重し愛し、生命を守り慈しむ心を育て、自然との共生を自覚する。そうした心の成長が、ひいては地球環境保全に有効なこと。

具体的な改正の方向性B・・・法の役割を学び、道徳心や倫理観、規範意識を養成し、「公共」の在り方を豊かにする精神を涵養すること。

具体的な改正の方向性C・・・自国の伝統文化を深く理解し、日本人としての自覚を高め、かつ、他国の伝統文化に敬意を払い、国際社会から信頼をうる意識を涵養すること。

具体的な改正の方向性D・・・職業生活の充実、社会参加に必要な知恵知識を身に付けるため、年齢、性別に関せず、いつでもどこでも学習できうる機会を用意すること。

具体的な改正の方向性E・・・情報化、グローバル化、科学技術の進展など、時代や社会の変化をキャッチアップする対応を忘れないこと。

具体的な改正の方向性F・・・社会が多様化する昨今、適確な職業観、勤労観を育成すること。このとき日本のお家芸である「ものづくり」や「女性の人生における職業の位置付け」に注意する。

具体的な改正の方向性G・・・男女が互いにその人権を尊重し、その責任を分かち合う体制を整備した、男女協同参画社会を実現すること。

個別具体的な改正の方向性A・・・学校の基本的な役割について、教育を受けるものの発達段階に応じて、知徳体の調和のとれた教育を行なうとともに、生涯学習の理念の実現に寄与する視点を導入。

個別具体的な改正の方向性B・・・学校教育における教員の位置の重要性から、研修に励み資質向上に努力する規定を導入。

個別具体的な改正の方向性C・・・子どもの教育に対する第一義的な責任が家庭にあることを確認し、家庭教育の充実をはかるため、国や自治体の支援が大切であるという視点を導入。

個別具体的な改正の方向性D・・・教育の目的を実現するため、学校、家庭、地域社会の三者連携、協力についての規定を導入。

個別具体的な改正の方向性E・・・自由で公正な社会の形成者として、国家社会の諸問題の解決に自主的に関わって行く意識を養成する規定を導入。

個別具体的な改正の方向性F・・・憲法の規定する信教の自由(20条)や政教の分離の原則に配慮し、宗教に対する寛容の態度、宗教の意義を尊重する旨を導入。

教育振興基本計画について・・・文部科学省の枠内でまとめられた計画を超え、政府全体として教育政策の位置付け、総合計画の推進を実施する立場から、教育とは未来への先行投資であるということを国民に伝えたい。そのため、行政上の重要分野において基本計画が練られているのと同様に、教育分野においても振興計画の策定作業に手をつけることが必要。5年をもって計画期間に設定し、「『確かな学力』の育成」、「良好な教育環境の確保」、「教育の機会均等の確保」、「私立学校における教育研究の振興」、「良好な就学前教育環境の整備」などの重点項目に力を注ぐ。

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