聾 浩の教室 聾
−掠-mode版−

麗麗政治道徳の行方

 国際社会から死刑を宣告されることが確実視されているトランプの男の心境はいかなるものであろうか。自己の拘束が中東社会の安定につながると判断され、株価を押し上げたことにいかなる感慨を持っていることであろうか。

 二人の息子を殺され、ダニが住み着きそうな不精髭と生気に陰りを見せる眼を備えたこの男は、それでも大量破壊兵器など存在しないと超大国の取調べに応えている。

 大義名分なく世界を戦争に突入させ、平和国家日本の自衛隊派遣までをも要求した米国は、政治倫理の次元でいかに彼を裁こうとするのであろうか。捏造と隠蔽ではじまった戦争からの退却は、自らの失政を認めることになるが、しかし、すでにいくら砂漠をほじくり返しても破壊兵器はでてきそうにもない。

 その男の肩を持てば、これは「落し入れられた」事態である。人類は汚点を残した。もちろんWTC崩壊の人命犠牲はとてつもなく悲しい。ただビルに突っ込んだあの映像が政治的ヒステリーに転回し、後付けの理由で独裁者狩りを世界的にはじめたのには、その評価に困難がストークする。

 政治倫理に悖る今次の戦争遂行は、勝ち組み主導の裁判によって表面的には結審するであろう。しかし東京裁判に不平を持つ思想と同様の発想がアラブ世界から消えるはずがない。彼を殉教者として祭り、ラーディンは息を吹き返そうと企んでいよう。

 現時点では「正当な」不精髭男の主張を、人類はどのように受けとめればいいのか。超大国の政治道徳がそのまま国際社会の政治道徳であるといえないが、それでも人類の倫理が問われている。もしこのまま訝しい政治的、道徳的判断に圧し切られてしまえば、もはや正義は何処にも存在しないといっていい。自由主義、民主主義は虚妄にほかならなくなる。

 国際社会に理性がなくなって、荒廃感が漂う砂漠化世界になる。子どもですら、おかしいことがわかっている。ということは、国際社会は子どもを育成することなどできないのである。

 忠臣蔵の討ち入りには民衆をジーンとさせ、納得させる思想的根拠があった。だがいま世界を納得させる理論はどこにもない。あるとすればそれは米国が作り上げた蜃気楼である。

 蜃気楼をホンモノだと観念するしかない日本の国民は、やりようのない心のうごめきをどう処理すればいいのか


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