聾 浩の教室 聾
−掠-mode版−

歷力蜘蛛の糸

 昨日のNEWS23が特集を組んだように、経済対策、それを象徴する非正規雇用問題の解決が年末年始の政治課題となっています。よく漢字を読み間違いする麻生氏は、この政治課題を解決するべく補正予算に言及し、生活を守る予算だと大見栄切っていましたが、政治に頼ることの虚しさを表現したに過ぎないようです。世界で最初に不況から脱出できるかどうか。
 景気回復を前提にすると約束しても、消費税法改正を遮二無二実現しそうです。すでに公明党を説き伏せています。こうした消費税アップがアジェンダになっている財政状況は、日本経済の死に体を国内外にいいふらしているようなものです。それで「脱出」をいえる心臓は、さすがは茂の孫という貴族性の臓器でしょう。自民党は下野という形で国民に謝罪し、歴史的に反省しなければなりません。いつもいっている「解党的出直し」を本気でやるべきでしょう。
 こうした政治状況の窒息をさらに埋葬にまで先導するのが、皮肉にも日銀でした。日銀短観はアナウンス効果の恐怖を知りつつも、「景気は悪化している」といわざるをえませんでした。
 トヨタショックやソニーショックが日本に暗雲をもたらし、太平洋の向こうでは、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ、クライスラーのビッグ3がガケップチに立っているからです。自然の摂理に逆らい、東からの低気圧となって押し寄せているといえるでしょう。これはすぐに台風に変質します。この超強力凶悪な台風は、オズの魔法使いのように、最終的にメルヘンをキャリーしてくれる保証はまったくありません。
 さらには銀行の銀行の立場を守るべき日銀が、コマーシャルペーパーを買い取る動きもみせています。これは間接金融の禁じ手を実行するに等しく、その破綻は日本を超不況に陥れることでしょう。アイスランドやジンバブエは対岸の火事ではありません。
 日銀のこうした2つの作業は、やむをえないものかもしれません。前者はアナウンスですからまだしも、後者は悲惨です。グリーンスパンが謝罪したような議会演劇が、数年後の国会で再現されることは、聴衆の立場として面白いのでしょうか。議会が国民の日常生活に浅いところでも深いところでもつながっているかぎり、自分で自分を笑うという、笑えない聴衆を、聴衆そのものが演じなければならないということになります。オーディエンスにアクターを要求する政治です。その時給が定額給付金とすれば、作り笑いも極まるということです。だが、それこそが、国民主権ということなのでしょう。
 「おい、地獄さ行ぐんだで!」ではじまり、「そして、彼等は、立ち上がった――もう一度!」で終了する小説が大層売れているようです。雇用情勢は悪化し、ニート60万人、フリーター180万人を数える現実は、ひょっとすれば「ホームレス予備軍」の生産を意味するかもしれません。彼らが多数となり、都会を彷徨うあるいは漂うほかなくなるのかもしれません。ワタクシは、実際、水谷氏とは目的が違いますけれども、大阪はミナミの街を夜回りします。PCを抱えて、あるいはマクドナルドに、あるいは隠れ家的居酒屋にと。マクドナルドはイロイロな人間模様があって、若い方から初老の夫婦まで吸収しています。始発を待つわけでもない行き場のない人びとが、数百円で席を占領しています。ワタクシもその一人としてPCボードをたたきまくっているわけです。煙と体臭と入り混じった空間は「地獄」的環境です。深夜4時にたたきだされるあの人たちは、その後、何処へいくのでしょうか。わかりません。しかしまた、この空間に舞い戻ってきます。
 ちょっと前までは、「プータロー」と笑って済ませて自己の将来に多少の希望と期待を寄せていた若い人たちは、100年に一度の「地獄」に遭遇し、その未来が濁ってきています。革命的伝統のない我が国ではありますが、西洋18世紀後半に匹敵するアクションを、合法的支配の下で実現できないものでしょうか。みながあきらめかけている政治に再び魂を入れるのは、投票用紙という武器しかいまのところありません。武器を武器と認識できる正気を保てているのかどうか、これをマクドナルドの住人に確かめる選挙が、春までに告知されることを願っています。
 日銀からマクドナルドまでつながる切れない蜘蛛の糸は、芥川でさえ描けないものです。切れるから蜘蛛の糸なのに、切れない蜘蛛の糸。しかも現代の蜘蛛の糸にはバラのような棘があり、縄化しています。では、1億2千万人がつかまっても切れない現代の縄は、一体、どこから垂れ下がってくるのでしょうか。それは神仏が製造・用意してはくれません。自ら紡ぎだすほかありません。しかしそれは自己責任の紐とは別の紐をあざなっていなければならないものと思うのです。すなわち、あざなえる縄は自己責任の紐とライフラインの紐と、さらにもう1本の「知恵の紐」とであざなわれなければならないと思われるのです。この「知恵の紐」をどう作るかが問題なわけです。そしてそれが、「知恵の輪」なので、なかなか解けないというわけです。


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