コラムとしての過去問研究

2002年3月26日

次のA〜Eは、教育に関するさまざまな法令の条文である。これらの条文を読んで、下の(1)〜(6)の問いに答えよ。

A〜Dの法令の条文は省略)

E.中等教育学校の前期課程の教育課程については、第24条第2項、第26条の2及び第53条の規定並びに第54条の2の規定に基づき( Z )が公示するb中学校学習指導要領の規定を準用する。[学校教育法施行規則より]

(1)空欄に入る適切な語句を、それぞれ書け(ここではZだけだが、省略した条文の中にX、Yの空欄が設定されている)。
((2)〜(5)の問いは省略)
(6)Eについて、次のア、イの問いに答えよ。

ア.下線部aに関し、本県の公立学校で実施されている中高一貫教育の実施形態を、次の@〜Cから一つ選んで、その番号を書け。

@併設型中学校・高等学校 A総合型中学校・高等学校 B連携型中学校・高等学校 C中等教育学校

 イ.下線部bに関し、次の@〜Cは、それぞれこれまでの小学校・中学校・高等学校等の等の学習指導要領の特色を記したものである。これらの@〜Cが歴史的に古い順番に並ぶように@〜Cの番号を用いて書け。

@ 調和のとれた人間性豊かな児童生徒の育成を図り、ゆとりある充実した学校生活を実現させることを目指した。

A ゆとりの中で特色ある教育を展開し、自ら学び自ら考える力などの生きる力を培うことを基本的なねらいとした。

B 国際的にみて国民の教育水準を高める立場から、道徳教育の徹底、基礎学力の充実、科学技術教育の向上などを掲げた。

C 生涯学習の基盤を培うという観点に立ち、社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることをねらいとした。

 前回のつづきです。新潟や、今回の2002年度・香川県が出題しているように、中高一貫教育は教育界全体が取り上げたくなるトピックのひとつといえますね。どのように中高一貫教育の内装を整えるべきなのか、きっと、教育委員会も苦しんでいるのでしょう。記号選択の問題では、教採受験生の問題関心を探るのに限界があります。しかし、この問題を通し、一貫教育の意味を考えてもらおうという趣旨なのでしょう。ところで香川県の教職教養問題は一味違った良問であり、問題構成も抜群に凝っています。教育学、教育現象にかかわる融合的な問題を委員会の方が作成されており、教育に関する経験、知識を豊富に持った人材を採用しようとする委員会の意欲がひしひしと伝わってきます。それだけに香川県教育委員会が裏金を作っていたのが惜しまれます。ちなみに中高一貫教育は、教育の地方分権と切り離せない議論であると思いますので、そこから述べていくことにしましょう。

 教育の地方分権化は、2重の意味を持つのではないでしょうか。ひとつは、学校の設置・管理に関し、自由裁量の度合いが大きくなるということです。地方の特色を十分に教育課程に取り入れる指導が、教育委員会から指示されそうです。また、教育委員会のそうした意向を各学校が受け入れず、各学校独自のコンテンツを用意してもいいのです。どちらにしても、教育内容の自由化が進むことになり、教育内容の枠が広がります。とすれば、児童生徒の興味・関心にしたがい、主体性を重んじた教育がやりやすいでしょう。最近の文部科学省の発言、「学習指導要領は、最低ラインに過ぎません、これを超えることをしてもいいですよ」を額面通りに受け止めて、一歩も二歩も踏み込んだ教育実践が期待されます。それだけに先生方のしっかりとした総合学習プランが立案さるべきなのです。ワタクシが教採受験生の方に、具体的な総合学習のプランを何かひとつ考えておきなさいというのは、こうしたところに理由があります。もちろん、中高一貫教育において取り組んで効果的な総合学習の内容ということです。

 もうひとつは、このように自由な教育が可能なことの裏返しとしての「予算の地方分権」です。すなわち、教育内容に関し、自由に実施してよいですから、予算も地方に任せます、国からの教育助成金はちょっと削りますね、という感じでしょうか。「あらゆる意味で経済的にどうするか」が、各学校にのしかかってくるわけです。「総合的な学習の時間」に子どもたちが環境教育の一環として、また、野外活動のキャンプで、郊外学習に出かけるとします。そこには、さまざまな危険が待ち受けていることでしょう。そうすると、児童生徒に保険をかけなければなりません。そのお金はどうするのでしょうか。総合学習は、どのようなものであれ、従来教科とちがった特色を持たそうとして教材費も多くかかるでしょう。それをどうするのでしょうか。また、学校予算の観点からいいますと、細分化された予算の一覧表などみたくもないですよね。学校の備品として購入は許すが、教材費に使ってはいけませんなどということはないでしょうけど、使途を厳密にチェックされれば、ぎすぎすした教育を提供することにもなりかねません。不明朗会計はチェックしつつ、項目を限定しない予算の使い方に今後は転換していかないといけませんね。ちまちました、気を使うような使い方しかできないと、教員の精神衛生上もよくありません。

 なぜ「教育の地方分権」ということをいい出したのかといいますと、中高一貫教育も、地方の実情に合わせて設置することができますので、その意味では地方分権を象徴する学校制度であるということがいえるからです。こうした中高一貫校の出現は、地方の教育のあり方をめぐって、自治体そのものの競争意欲を刺激することも間違いありません。そして、パイロット校的に各都道府県に1校、中等教育学校を設置しようとする動向は、教育制度の複線化という議論を惹起します。電車の線路に単線、複線があるように、教育制度にも、2つの線路を設けようというのが教育制度の複線化ですね。この複線化は、どのような意味を持つのでしょうか。教育学的な見地からいえば、複線化は、ダブルスタンダードです。支配階級の学校系統と被支配階級の学校系統の2つを用意する前近代的教育制度そのものです。

 従来の6・3・3制がよいのか、中等教育学校の6・6制がよいのか、また、最近、日教組が提案した5・4・4制がよいのか、発達心理学の理論を踏まえつつ、学校制度論に関し議論が分かれるところでしょう。児童生徒、保護者の方がどちらがいいか選ぶことができるのです。我が子の将来を考えれば、重点的に予算配分もされるであろう中高一貫校を選択するのは目に見えています。中学入試が激戦になるのは必至です。教育熱心な保護者とそうでない保護者の間の乖離は深刻になり、教育履歴がいまだに「ものをいう」日本社会では、どのような社会階層に所属することになるのか、未来が11歳で決まることになります。教育基本法の精神、なかでも教育の機会均等をのりこえようとする立場から、形式的平等を打破し、個々の能力を伸長させる目的からはじまった新しい制度論であるにもかかわらず、どうにもマイナス面ばかりが見えてきます。政治政策と教育政策が結びつき、制度として中高一貫教育は太くおおきな幹になっていくのでしょうが、繊維質でない、すかすかの枝や、養分の吸い取り効率の悪い根を持つことになるかもしれません。中高一貫の長所を享受する前に立ち枯れしそうです。

 この中高一貫教育の話題は、また、時期をかえて、違った角度から分析したいと思います。

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2002年3月14日

公立高校の中高一貫教育に関して述べた文として適切でないものは、次の1〜5のうちどれか。

1.中高一貫教育は、これまでの中学校・高等学校に加えて、生徒や保護者が中高一貫教育をも選択できるようにすることにより、中等教育の一層の多様化を推進するものである。

2.中高一貫教育は、生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すもので、平成10年4月から、東京都や広島県などで実施されている。

3.中等教育学校は、一つの学校として6年間一体的に中高一貫教育を行うもので、宮崎県に例がある。

4.併設型の中学校・高等学校は、中等教育学校よりも緩やかな設置形態であり、高等学校入学者選抜を行わずに、同一の設置者による中学校と高等学校を接続する。

5.連携型の中学校・高等学校は、既存の市町村立の中学校と都道府県立の高等学校が、教育課程の編成や教員・生徒交流等の連携を深める形で中高一貫教育を実施するものである。

 一般の会社の統合の場合、社長以下、役付きの人びとの配置をどうすべきか、大問題ですね。学校でも事情はそう変わらないのじゃないかな。教員は教育公務員だから、身分保障はあるけれども、教員間の考え方の違いに発する「権力争い」など、ないこともないでしょう。なんにもないところから会社を起こすように、新しく中等教育学校を設置する際は、問題は起こらないでしょう。しいていえば、その地域に愛情もって新設校が受け入れられるかどうかでしょうね。具体的には、地域の特色、たとえば都市的には「教養教育」という名の受験教育、地方的には伝統産業を残す教育的努力、林業、漁業などの実学的要素を取り入れた「特色ある学校作り」を実現しようとしているかが問われると思うのです。しかしこれは、内容さえ伴っていれば、崩れることはないでしょう。かなり皮肉を込めて書いていますが・・・

 新規中等教育学校にくらべ、併設型や連携型は、その出発にあたり、多様な問題を抱えているといえますね。とりわけ、連携型中等教育学校の成功は、上で述べた「権力争い」をせず、所属する教員の方々がどこまで協調するかによるのではないでしょうか。実際のところ、連携型の中等教育学校における校長は一人になるのですから、その「決め方」も委員会の中では「大変」なのでしょうね。この辺のことも含めて「職員会議は校長が主宰する」と法規改正したのであれば、鋭い見通しをもった制度改正であったと評価できますねえ。意思決定機関が確定するからです。連携型は下手をすれば設置者の規定に絡んで「喰うか喰われるか」の戦いにならないともかぎりません。もちろん住民には見えない水面下での争いです。しかしそのあおりがあるとすれば確実に保護者にきます。連携は、もしそれが地域や保護者の望まない連携であったならば、悲惨なことになりかねないです。たとえば、「この中学に進学しなければならなかったばっかりに、うちの子は本当はA高校に行かせたいのに、連携先の高校に必ず行かなければならないわ。理不尽よね」。この憤懣に連携型中等教育学校の教員はどのように答えるのでしょうか・・・

 上で触れた人事的問題は、当然規模的問題と絡んでいます。というのはどのような意味なのでしょうか。想像するに、ひとつの中学校とひとつの高校が手を組んで中等教育学校を作るというのは、規模的なことを考えてもありえないでしょう。1中学校の人数=40人学級×4クラス×3学年=480人としましょう。おそらく、高校の在学者数は、40人学級×22クラス(大阪府立高校の平均設置クラス数・ここを参照)=880人位でしょうから、ふたつの中学校が少なくとも統合しないと中等教育学校の中学部を形成することはできませんね。あるいは、もう少し規模をおおきくして3中学校規模になるやもしれませんね。変ないい方になりますが、必ず校長一人は不必要になるのです。「もめる」原因にならないとは限らない所以です。想像ですが・・・

 ところで併設校は2種類に分かれます。従来の中学校が、新しく高校を作って中等教育学校化するケース。ですからこの場合、市町村立中学校+市町村立高校と、市町村が設置者となるでしょう。もうひとつは、この逆で、従来の高校が、新しく中学校を作るケースです。だから、中学部は都道府県が設置者になりますね。あくまで設置者は同一でなければならないのですね。どちらのケースにせよ、いままでは国の制度的縛りがあって、地方自治体が自由にこの手の学校を作ることはできなかったのです。それが、「地方の時代」であるとか、「地方分権」とかいわれるかけ声のもと、各自治体の審議会や中教審が諮問と答申を積み重ね、ようやくここまできました・・・

こうした2つの併設型は、いわば、「開拓型」といえるでしょう。新規事業開拓=生徒数確保ということです。市町村立の中学校が生徒をそのまま確保しつつ、他中学校からの生徒も囲い込んで自前の高校へ入れる。セールスポイントは何か。「うちの中高一貫教育の高等部は進学に力を入れていますよ」という殺し文句になるわけね。もしも外から確保しないで純粋培養的に生徒を囲い込むのなら、中学部入試は熾烈を極めるでしょう。必ずそうなります。「おうちのひと」の教育的熱心さはきわめて健全な要求です。誰でも親たるもの我が子を教育条件の整ったところに行かせたいものです。逆に、「うちの中高一貫教育の高等部は進学実績がありますよ。だから中学部は将来を考えるといい選択ですよ」といって、小学校段階における選抜を実施し、優秀な小学生が「我が校」に集まってくる・・・

 長くなりそうですので、次回、「複線化」の問題も含め、もう少し中等教育学校に付いて検討します。出題は新潟・2002年度です。

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